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PV撮影に向けてのリハ(2
「すごく良い曲ですねー」
ショウヤが目を輝かせながら言った。
「あと、俺の曲とサエの曲と、カオルの曲…全部で4曲ってのが、俺らの希望なんだけど…」
「…なるほど、それぞれの1曲ずつって事ですね」
「まー聞いてもらって、ショウヤが判断して」
「いえいえ、それで決まりでいいと思いますよー」
サエゾウに色々処理してもらって、
僕もようやくカウンターに座った。
「復活どころかパワーアップしてるね、カオルー」
ハルトが言った。
「え、そうですか…」
より一層ダメになってる気がするけど…
特にあっちの方が…
「コレって二重人格の人の歌でしょ」
「えっ…」
ハルトがサラッと言ったので、僕はとても驚いた。
「へーそうだったの…」
「ドロドロなのは気付いてたけど」
「…あーそうなんだ、俺は2人いるのかと思ってた」
シルクはそう言った。
「…」
歌詞の内容だけでそこを表現するのが、
スゴく難しいと思っていたのに
まさかの、ちゃんと伝わっていたとは…
「ありがとうございます…まさか分かってもらえると思ってなかった…」
「カオルが上手だからだよー」
ハルトは何でもない風に言った。
「俺も何かやる気出てきた…何着せようかなー」
まーハルトさんのやる気は、
ちょっとばかり恐ろしい感じがしますが…
…と、何やらジメ〜っとした空気が漂ってきた。
「…僕は分かりませんでした…」
その空気の発生源で、
ショウヤが…ズーんとした感じになっていた。
「もっとちゃんと理解できないと、PVなんて作れませんよね…」
「いやだって、ショウヤは常にレンズ越しだからね」
カイが取りなすように言った。
「レンズ越しだからこそ見える真実があるんです!」
ショウヤの語りに力がこもった。
「普段見えない、誰も気付かないものが、レンズ越しなら見えるんです。その瞬間の、その人の気持ちだって、図れるんです」
周りの皆さまは、若干引いてしまった…
「それなのに…カオルさんの歌の真意が分からなかったなんて…そんなんでカメラマンなんて名乗ってるなんて、おこがましい…」
ショウヤは、更にズーんと…下を向いてしまった。
周りの皆さまは…困って顔を見合わせた。
「…ちょっとズルいかもしれないけど、動画だったら伝わるんじゃないですか?」
ふと思って、僕は言った。
「たぶん動画の画面越しの方が、もっと簡単に見抜かれちゃうんじゃないかな…」
ショウヤは、ハッとしていた。
「写真ってホントに一瞬ですもんね…そこに凝縮される真実を見抜くって、物凄く難しいと思う…」
「…」
「歌って伝える…なんかより、100倍難しいと思います。ショウヤさんはスゴいです…」
「…」
ショウヤは黙ってしまった。
また何か、シーンとしちゃった…
「カオルすげー」
「…カオルがショウヤを言いくるめた」
「あのショウヤの語りを止めた」
「メイクも写真と動画で使い分けたりするからね…LIVEはまた全然違うし…」
ハルトも後援してくれた。
「…うう…」
下を向いていたショウヤが…少し震えながら唸った。
と思ったら、バッと顔を上げて…
ボロボロと涙を流しながら、僕を見た。
「カオルさん…ありがとうございます…」
「…っ」
「僕、もっと動画の修行に励みます…絶対、良いPV作ってみせますっ」
「あーまた泣かした」
「罪作りなヤツだ…」
「コレで天然なんだから、ズルいよなー」
あなた達はホントに、
さっきから言いたい放題ですよねーもう…
「じゃあ、ショウヤの修行も兼ねて、練習しますか」
カイが言った。
「もう是非、お願いします!」
ショウヤは張り切って、カメラを構えた。
そして僕らは、再び定位置についた。
「じゃ、とりあえず…PV候補曲をバーっとやるか」
「オッケー」
Dead Ending、宵待ち、真夜中の庭に、神様か…
ただでさえ、ヤバい曲ばっかりだ…
ショウヤさんの為にも何としても持ち堪えなければ。
僕はまた、両足にグッと力を込めた。
「そんな気合い入れたって、どーせフニャフニャになっちゃうんだから」
僕の様子を見て、サエゾウが言った。
「…」
「まーまー、せっかく努力してるんだから、暖かく見守ってやろうよ…」
おかあさんシルクが、子どもを宥めるように言った。
「せいぜい頑張って」
カイがトドメを刺すように言い捨てた。
ううう…
元はと言えば、あなた達のせいなのにー
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