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第12話 球技大会一日目

 球技大会当日。  今井のバスケの試合の応援を終えた真は、続けて行われる佐野のバレーの試合も応援するため体育館に残った。すぐに、Tシャツにジャージ姿の佐野がクラスメイトと共にやってくる。  最初はコートの近くに立っていた真だが、続々とやってくる女子に押され後ろの方へ追いやられてしまった。  どうやら佐野の応援に、別クラス別学年の女子まで集まってきたようだ。  佐野のモテモテっぷりに感心していると、試合がはじまった。  佐野が活躍するたびに、黄色い歓声が体育館に響く。  背の低い真は女子達の間からどうにかこうにか試合を観戦していた。彼女達のように声を上げることはできないが、心の中でしっかりと佐野を応援する。  不意に、佐野がこちらの方へ顔を向けた。  パチリと目が合う。  すると、佐野がウインクした。  真の心臓がドキンと跳ねるのと同時に、前にいた女子達の悲鳴が上がる。 「今の見た!? 私達にしてくれたんだよね!?」 「見たー! マジカッコいい! 写真撮りたかったー!!」  その会話を聞いて、真は自分にウインクしてくれたのかと勘違いしてしまったことを恥じた。  そんなわけがない。自意識過剰も甚だしい。  赤くなる顔を隠す。  それにしても、さすが佐野だ。キザな仕草も様になる。写真に残しておきたいという彼女達の気持ちもわかるくらいかっこよかった。  佐野の活躍を目に焼き付けている間に試合は終わった。  途端に、佐野に女子が群がっていく。  応援を終えた真は体育館を後にした。  応援以外にすることのない真は、自分のクラスの次の試合がはじまるまで時間を潰そうと教室に向かっていた。  すると、後ろから声をかけられた。 「真ちゃん」 「っ……佐野くん?」  女子に囲まれていたはずの佐野がそこにいた。 「どうしたの?」 「いや……」  佐野が口を開いたとき、廊下の角の向こうから彼を捜す女子生徒の声が聞こえてきた。 「佐野くん、あっちに行ったよね?」 「うん、多分。向こう行ったの見えた」 「やばっ……」  佐野は焦った様子で真の手を掴んだ。 「真ちゃん、こっち来てっ」 「えっ……?」  手を引かれ、ドアの開いていた近くの教室に入る。 「ここ入ってっ」 「わっ……!?」  わけもわからぬまま、佐野と一緒にロッカーの中に入った。  狭いロッカーの中で真はドアに背を向け、佐野と向かい合う。幸い掃除用具などは入っていない空いていたロッカーだった。  バタバタと、廊下を走る複数の足音が聞こえる。 「あれー? 佐野くんいないよ?」 「おっかしいな。絶対こっちに来たのに」  教室の前でそんな会話が交わされている。  彼女達から逃げるように隠れたということは、佐野は見つかりたくないのだろう。  それを察して、真は息を殺して身を固くした。  少しでも動けばロッカーにぶつかり物音を立ててしまいそうで怖くて、しがみつくように佐野に密着する。 「もー、どこ行っちゃったのかな?」 「あっちの方捜してみる?」  足音が遠ざかっていく。  やがて完全に聞こえなくなり、真はほっと体の力を抜いた。 「ごめんね、真ちゃん。いきなりこんなとこ連れ込んで」  狭いロッカーの中で抱き締め合うように身を寄せているので、佐野の声が近い。  肌を掠める彼の吐息に落ち着かない気持ちを抱えつつ、真は首を横に振った。 「ううん。でも、なんで隠れたの?」  いつもなら、女子から逃げるようなことはしないのに。声をかけられれば笑顔で対応して、楽しそうに会話している。  佐野は疲れたように深く息を吐いた。 「いやー、なんか、凄い人数の女子に囲まれちゃって……。写真撮ってとかタオル使ってとかお菓子食べてとか、なんかもうスゴくって……」 「ああー……」  真も遠目に見たが、確かに凄かった。  モテモテだなー、なんて他人事のように感心していたが、当の本人は大変だったようだ。 「そういうのいつもは断らないんだけど、今日はさすがに人数が多くて。全員対応するのも全員断るのも難しくて逃げてきたんだよね」 「そうだったんだ……」 「うん。ちょっと時間置いて落ち着くまでどっかに隠れてようと思って、その途中で真ちゃん見つけて、思わず一緒に隠れさせちゃった。ごめんね」 「僕は大丈夫だよ」  試合に参加するわけではないので問題はない。  そのとき、また廊下から佐野を捜す女子の声が聞こえてきた。  真はヒソヒソと声の音量を下げる。 「まだ出ない方がよさそうだね……」 「うん。ほんとごめんね。こんな狭いとこに閉じ込めることになっちゃって」 「ううん。なんか、ちょっと楽しいかも……」  ロッカーに隠れるなんて、こんなことがなければ体験できなかっただろう。かくれんぼを思い出して、少しワクワクしてしまう。 「そう? てかごめん、俺、汗臭くない?」  焦ったように言って、佐野は身動いだ。  試合で随分動いていたし、当然汗はかいているだろう。けれど、別に汗臭いとは感じなかった。寧ろ佐野はいつもいい匂いがする。 「ううん。佐野くんの匂い、好きだよ」  思わずすんすんと匂いを嗅いでしまう。  佐野は深く息を吐き出した。 「真ちゃんてば、この状況でそういうこと言っちゃう?」 「え? あ、変なこと言ってごめん……」  匂いが好きだなんて、うっかり気持ち悪いことを言ってしまった。  反省する真を、佐野がぎゅうっと抱き締める。 「ひゃっ……!?」 「そーいうことじゃなくってさー」  佐野は真の耳の後ろに鼻を擦り付け、同じようにすんすんする。  匂いを嗅がれて、真は慌てて体を離そうとするが、がっちり押さえられて身動きがとれない。 「あっ、だ、だ、ダメっ」 「あはっ、お返しだよ」  楽しげに笑い、佐野は真の首筋に鼻を押し付ける。 「俺も真ちゃんの匂い好き。甘くて、美味しそうな匂い……」  そう言う佐野から、甘い香りが漂ってくる。彼の方が余程、甘くて美味しそうないい匂いがする。  その香りを吸い込み、真の瞳がとろりと蕩けた。 「佐野くんの、方が……すごく甘くて、いい匂い、だよ……」  掠れた声で言えば、佐野は顔を離した。  目が合い、互いの瞳に宿る欲を映し出す。  どちらからともなく唇を重ねた。 「ふぅ……んんっ」  熱い舌を絡め合い、状況も忘れ夢中になってキスを交わす。  差し込まれた舌に口の中を舐め回され、真はぞくぞくと体を震わせた。  彼の舌に吸い付き、ちゅぱちゅぱと音を立てて味わう。  佐野の手が真のTシャツの中に潜り込み、直接肌を撫でた。  それだけで、真の下腹が期待に疼く。  そちらに気を取られている内に、舌を彼の口腔内へ引き込まれた。お返しのように吸い上げられ、柔らかく歯を立てられる。 「んふぁっ、ぁンッ」  くぐもった声と荒い息遣い、ぴちゃぴちゃと卑猥な水音が響いている。狭いロッカーの中では、その音がやたらと大きく耳に付いた。  密着した下半身が互いに熱を持ちはじめ、密着しているせいでそれが明確に伝わってきた。  頭を擡げ膨らんだ性器がジャージ越しに擦れ合う。  このままでは汚してしまう、と不安が頭を掠めたとき、佐野が二人のジャージを下着ごとずり下ろした。 「ひぁんっ」  剥き出しになった欲望が直接擦れ、その刺激に思わず大きな声を上げてしまう。  慌てて唇を噛めば、再び佐野がキスで口を塞いでくれた。 「ふっ……んっんっ、はぁっ、んんっ」  濃厚な口づけを交わしながら、真は腰を揺らす。  反り返った佐野の硬い陰茎の裏筋に、先端を擦り付け快感を貪る。  恥ずかしくて、はしたないと思うのに、気持ちよくて止められなくなっていた。  二人分の先走りでぬるぬるに濡れて、そのぬめった感触が堪らない。  佐野は真の痴態に、クスクスと秘めやかな笑いを零した。 「真ちゃんてば、俺のちんぽでオナニーしてるみたい」 「アンッ、んっ、ふぁっ、あっあっ」 「一生懸命腰振っちゃって、かぁわいい。そんなに俺のちんぽ気持ちいい?」 「きもちぃっ、佐野くんのおちんちん、固くて、んぁっ、擦れるの、きもちいいっ」 「あはっ、真ちゃんのおちんぽ、もうぬるぬるだね」  真の耳に舌を這わせながら、佐野は手を動かす。  彼の掌が臀部を撫で、やわやわと揉みしだき、アナルに触れた。そこは既に蜜を漏らし、待ちわびていたように指を咥え込もうとする。 「ひぁっ、あぁんっ」 「こっちもびしょびしょ。お口ぱくぱくして、可愛くおねだりしてるね」 「ぅんんっ」  ぬるんっと、飲み込まれるように指が挿入された。  佐野の長い指が、ぐるりと中を掻き混ぜる。肉襞が愉悦に蠢き、彼の指を締め付けた。 「ぁんっ、ふっ、んっんっ、ひぅんっ」  掻き回され綻んだ後孔に、二本、三本と指が追加された。  内部は悦んでそれを受け入れ、吸い付くように蠢動する。  敏感な膨らみをこりこりと三本の指で捏ねられ、強烈な快感に、真は佐野の胸に顔を埋めて身悶えた。 「あっあっあっ、らめ、そこ、ぐりぐりされたらぁ、あんっ、きもち、よすぎて、んっ、ンンッ」 「おちんぽ擦り付けるの止まっちゃってるよ? おまんこの方が気持ちよすぎて、もうそれどころじゃないのかな?」 「んっんっ、は、ぅんっ、佐野くぅ、んんっ」  与えられる刺激は確かに強い快楽をもたらしているのに、それなのに真の体は物足りないと疼いている。早く満たしてほしいと、下腹が切なく訴えてくる。  指で刺激されればされるほど、その疼きは大きくなっていく。  真は佐野にしがみつき、彼を見つめて哀願した。 「あっ、佐野くん、お願ぁっい、おちんちん、入れてぇっ」  こんな場所で、そんなはしたないことを頼んでしまう自分を恥じながら、それでも我慢できずに彼に縋る。  涙を浮かべて懇願する真を見下ろし、佐野はうっそりと微笑んだ。ぐちゅぐちゅと後孔を弄りながら、意地悪く囁く。 「いつ誰が来るかわかんないのに、ちんぽ欲しくて我慢できないんだ?」 「んあぁっ、んっ、ごめ、なさぁっ、あぁっ、がまん、できないぃっ」  ロッカーを満たす甘い香りにくらくらし、その香りに当てられてどんどん性感は高まり、満たされないもどかしさに涙が零れた。 「ひっ、んんっ、佐野くんのおちんちんで、あんっ、僕のなかぁっあっ、いっぱいにしてほしくて、がまんできないのっ」  佐野は情欲に濡れた瞳をうっとりと細めた。真の目尻を濡らす涙を、ペロリと舐めとる。 「可愛いなぁ、ほんと。真ちゃんが望むなら、いつでもどこでもちんぽ突っ込んであげたくなるよ」 「んんんぅっ」  ちゅぽんっと、後孔から指が抜かれる。 「後ろ向ける? 狭いから、後ろからじゃないと入れるの難しいかも」  佐野に促され、真は体を反転させる。窮屈だが、それくらいの動きはできた。  佐野に背を向けると、ジャージと下着を更に下に下ろされた。  真は無意識に、誘うように腰を後ろに突き出す。  差し出されたアナルに、佐野は男根を押し当てた。  後ろから回された佐野の手で、真の口が塞がれる。  そして、内奥を剛直に貫かれた。 「んっ、────っ!!」  硬い肉棒に腸壁を擦り上げられ、真は快楽に全身を痙攣させた。  ひくひく震える真の内部を、佐野は自身の雄蘂で押し広げていく。緩く腰を揺すり、奥を突き上げる。 「ふぅんっ、んっ、んん──っ」  嬌声は佐野の手で塞き止められ、息苦しさを感じながらも、直腸に与えられる快感に真の体は歓喜した。  肉筒はゆっくりと抜き差しを繰り返す剛直にねっとりと絡み付き、蜜を分泌させてとろとろに蕩けていく。 「あっ、はあっ……真ちゃんのおまんこ、すごい……ぬるぬるで、気持ちいい……っ」  うなじに佐野の熱い吐息がかかり、ぞくぞくと肌が粟立つ。  前に回された佐野の手がTシャツの中に差し込まれ、かりかりと乳首を優しく引っ掻いた。 「んうぅっ、んっ、んっ」 「あはっ、乳首きもちい? 弄るたびにおまんこきゅんきゅんして、ほんと、俺も堪んない……っ」 「ふっ、ふうっ、ん、ふっ、っ、んっ」  内奥を穿つ腰の動きが僅かに速くなる。  胎内を抉られながら乳首をくにくにと押し潰され、真のぺニスからはひっきりなしに蜜が溢れ滴り落ちていった。  絶頂へ向け、夢中になって快楽を貪り続けていたとき。 「もー、佐野くんどこ行っちゃったのー!?」  廊下から聞こえてきた声に、真はびくりと肩を竦ませた。  同時に、佐野は動きを止める。 「全然見つかんないじゃん!」 「お昼一緒に食べたいのにー」  声は真達のいる教室のすぐ近くから聞こえてくる。ロッカーの外の様子は見えないが、今音を立てればきっとバレてしまうだろう。  緊張に体が強張る。連動して、直腸がぎゅうっと締まった。  背後で、佐野が息を詰めるのがわかった。 「っ…………はあっ……真ちゃんてば、こんな状況で俺のこと煽っちゃうの?」  佐野の熱っぽい囁きが耳の中に吹き込まれる。  弱々しく首を振る真に、佐野は笑みを零した。 「俺のちんぽ美味しそうに締め付けてるのに? おまんこいっぱい突かれたいんでしょ? 俺におまんこずぼずぼされて気持ちよくなってるところ、他の人に見てほしいんだ?」  やんわりと腰を回され、真は必死になって首を振り立てた。  見られたくない。そんなことは決して望んでない。それなのに、体は高揚して熱を帯び、ぺニスは萎えることなく蜜を漏らし続けている。腸壁はまるで佐野の言葉を肯定するかのように、彼の男根にしゃぶりついた。  見られたいなんて思っていないのに。自分の体がコントロールできない。  こんな場所でセックスしていることがバレてしまうかもしれないこの状況で興奮が冷めない。  自分の淫乱さに、ぽろぽろと涙が零れた。 「ふっ……うぅ……っ」  泣き出した真を宥めるように、佐野の唇がこめかみに押し付けられる。 「冗談だよ。ちんぽ突っ込まれてとろとろに蕩けきった可愛い真ちゃん、他の誰にも見せたくないからね」 「ンッ、ふぅっ、んっんっ」 「もう周りに誰もいないから大丈夫だよ」  気づけば話し声は聞こえなくなっていた。佐野を捜していた女子はいなくなったようだ。  安堵から、体の力が抜ける。 「だから安心して、おまんこぐりぐりされて気持ちよくなって」 「んふうぅっ、ぅんっんっんっんっうんっ」  激しい突き上げがはじまり、真は深い快楽へと投げ出される。  肉塊に最奥をごちゅっごちゅっと何度も抉られ、乳首を強く摘ままれた。  狭いロッカーの中、動きを制限されながらも佐野は腰を振り立て、肉筒を穿つ。 「んっんっ、んーっ、ふ、んんんっ」 「あっ、スゴ、おまんこぎゅうぎゅうに締まってっ……はあっ、イきそう?」 「んんっ、うっ、ふうぅっ」 「イっていいよ、はっ、ああっ、俺も、もう……っ」  一層律動が速くなり、奥深くに剛直を突き立てられ、真は絶頂へと上り詰めた。 「ンッ、っ、~~~~~~っ!」  びくんっびくんっと体を震わせ、真は欲望を吐き出す。  同時に精を搾り取るように肉筒が蠕動し、促されるまま佐野も射精した。  佐野の手が口から離れる。  唇を解放され、甘い精気に満たされる悦びに浸りながら、真は乱れた呼吸を整えた。  陰茎を引き抜いたあとも、佐野は真を抱き締めたまま体をくっつけていた。  彼の体温が心地よくて、真はぼんやりと身を任せていた。  やがて、「そういえば」と佐野が口を開く。 「バレーの試合、応援してくれてたよね。ありがと。真ちゃんが見ててくれたの嬉しかったよ」 「えっ……僕が見てたの、気づいてたの……?」  大勢の女子に紛れて、真の姿など目に入っていないと思っていた。  すると佐野は真の顔を覗き込み、拗ねたように唇を尖らせる。 「なに言ってるの。試合中、目が合ったでしょ?」 「あっ……」  目が合ったのは勘違いではなかったのだ。ではあのウインクも、自惚れではなく真に向けられたものだったのだろうか。 「真ちゃんがいたから、カッコいいとこ見せようって頑張ったんだよ」  ぎゅうっと抱き締める腕に力が籠る。 「あのっ……カッコよかったよ、すごく」  はにかみながら伝えれば、佐野は嬉しそうににっこり微笑む。  佐野が喜んでくれるのなら応援してよかったと、心から思った。

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