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第6話

「実は一週間ほど前から別チームのフォローでこちらにお邪魔していたんです。それで今日は朝からの会議に出席してまして」 「ああ、あの進捗会議ですね。やっぱり厳しいですか、開発スケジュール」 「ですね……。僕らの担当している管理側もカツカツですが、物流と工場会計側の開発がかなり危ないです」 「すみません。途中の仕様要件漏れを早めに気づいていれば良かったんですけど」 「いえ、木崎さん達にはとても良くしていただいています。こちらのほうこそ、連日こんな時間まで残業させてしまって申し訳無い」  彼の声色は澄んだ響きの中にもふわりと暖かみを感じられる。受話器越しの声よりも、その心地好い音に少し胸の奥が弾んだ。 「まあ、これくらいの残業なんていつものことですよ」  おどけて言った俺に彼は、確かに、とクスクスと笑い声を上げた。  しばらく二人で話を続ける。すでに互いの人となりがわかっているからか、初対面という気負いはすぐに無くなった。

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