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第8話
「じゃあ、僕はお先に」
にっこりと笑って先に喫煙室を出ようとする彼が不意に立ち止まる。じっとスタンド灰皿を見て、何を思ったのかそこに置いてある俺の煙草に手を延ばした。
「懐かしい香りだな。……同じ銘柄を吸っているのか」
(同じ? でも彼のはメンソール系の匂いがしたが……)
すると、彼は手に取った俺の吸いかけの煙草のフィルターを口にした。
(――は?)
急な彼の行動に呆気に取られる。水無月は少し顎を上げて俺の煙草をたなびかせると横目でにやりと笑いかけた。その艶めいた表情にドキリとする。
「ところで木崎さん。つかぬことをお聞きしますが、毎朝の通勤は駅からあの橋を渡って来るんですか?」
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