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第13話

***  最初にそれを見たのは月曜日の朝――。  その日は朝一からの会議の準備のためにいつもより早く家を出て、会社の最寄りの駅の前を流れる川に架かる大きな橋の上を寒さに肩を竦ませて歩いていた。  橋を渡りきると川に沿うように走る上下三車線の車道を跨ぐ横断歩道がある。そして、その横断歩道の向こう側には十五階建ての高級シティホテルが建っていた。俺はいつもの癖で信号待ちの間、シティホテルの壁面を下から上へと眺めた。  ホテルは一階から三階が大きなガラス張りの吹き抜けで、煌びやかなシャンデリアが見える。五階までが結婚式場や貸宴会場、レストランなどで、それから上は客室だ。  赤レンガ調のホテルの壁には各客室の窓が等間隔で並んでいる。その全てがいつも厚いカーテンで閉じられているが、その日は十階ほどまで見上げた時、そのフロアの真ん中の窓のカーテンだけが開かれていて、窓際に人が立っているのが見えた。

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