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第14話
こんな時は一日中パソコンの前に座っているのに、眼鏡を必要としない俺の両目は威力を発揮する。小さな頃から両眼2.0から落ちたことのない視力は、その人物の姿かたちをはっきりと捉えた。
立っていたのは細めの体躯の若い男。ホテルの白いバスローブを着込み、その手にはカップを持っている。どうやらコーヒーでも嗜みながら、下界の景色を眺めているようだ。
もうそろそろ目の前の歩行者信号が青に替わる。そう思った時だった。
(――ん?)
一瞬、下を向いた男と視線があった気がした。いや、気のせいか?
少しどきりとして目を逸らそうとしたが、その前に男の肩越しから、にゅうっと両腕が生えるのが見えた。その腕は彼からカップを奪うと、すぐに彼の胸の前で交差される。まるで後ろから抱きしめるように誰かが彼にぴたりと寄り添っているのがわかった。
(チッ、女連れかよ。イイ気なもんだ)
そう心の中で毒づいて青になった横断歩道を渡ろうとしたのだけれど……。
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