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第15話
(ん? 女じゃない? あれは?)
彼の後ろの人物は俺の目には薄い青色のワイシャツを着たオッサンに見えた。
オッサンは彼の耳元に口を寄せて何かを囁いて、彼はくすぐったそうに笑いながら首を竦めた。すると、オッサンの手が彼の下顎にかかって、グッと彼の顔を後ろに向かせるとおもむろに彼と顔を重ね合わせた。
(……あれは男同士でキスしているのか?)
自分の両目が捉えた光景にドキリとする。ぴよぴよと鳴る歩行者信号の音が聴こえなくなって、俺が渡るはずだった横断歩道はまた車が往来し始めた。次の青信号まで待つ間、俺は歩道の端の信号機の柱の陰でホテルの窓で繰り広げられる一こまに釘付けになった。
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