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第23話

 彼の戯れ言は聞き流して最後の処理結果の整合をチェックした。よし、これで良いだろう。何とか今日も終電には間に合いそうだ。  すると、じっと俺の後ろでモニターを見ていた水無月が、俺の右肩に手を添えると覆うように左の肩越しから腕を伸ばして、甘酒の缶でモニターのある部分を指し示した。 「ここ、合算した数値が違うよ。チェックマクロのミスなのかプログラムのバグなのか、ちょっと調べてくれる?」  えっ、と設計書とテスト仕様の記載を確認する。本当だ。設計書通りの計算結果になっていない。どうやらプログラムの呼び出し部品に問題があるようだ。 「こりゃ、今日中には直せないな」  この部品は他のチームの担当だ。明日、担当者に報告して対処してもらうしかない。 「そうだね。じゃあ、足掻いても仕方が無いから今夜は帰ろうよ」

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