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第26話
見上げた先にある水無月が宿泊するその部屋の窓はいつもカーテンが開かれていて、彼は朝のひと時をコーヒー片手にバスローブ姿で毎日窓際に立って景色を眺めていた。
一人の時もあれば、どこで調達したのか男と一緒の場合もある。で、男が一緒だと、大抵窓際で熱い交わりをおっ始めるのだ。きっと今夜も、俺が足を踏み入れたことのない怪しげな匂いの立ち込める場所に行って、湯たんぽを持ち帰るつもりに違いない。
(それにしても彼はこの街は初めてだろうに、よくそんな場所を知っているな……)
「今夜くらいは風呂でゆっくり温まって眠ればいいじゃないですか」
いつもシャワーだけというのもいけないのだ。人より寒がりなのだから、風呂に肩まで浸かれ、風呂に。
「でもね、やっぱり人肌の温もりは持続力が違うんだよ」
(それはいつもそいつらにアンアン言わされて、体温が上がっているからだろうが)
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