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第27話

 それでも水無月は駅へと向かう俺の隣を歩いている。今夜は大人しくホテルに戻る気なのか。まあ、明日の朝になって、窓を見上げれば湯たんぽ付きかは判るだろう。  水無月が宿泊するホテルに近づいた時、「……今朝の男は誰だったんです?」  何の気無しの質問は彼の歩みをピタリと止めた。そして水無月は、あはは、と笑い声をあげると、 「やっぱり毎朝、あの横断歩道から僕を見上げてくれているんだ。でも視力が良いとは聞いたけれど良く見えるよね?」 「水無月さんだって最初に俺が見上げていたこと、わかってたじゃないですか。見えてるんでしょ? 歩いている人達のこと」  水無月は含み笑いをして、 「今朝の彼はどこの誰かは知らないよ。でも大学生って言っていたかな?」

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