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第32話
水無月が顔をあげて俺を下から覗き込む。そして体を離すと、
「あんな場面を見て、僕に抱きつかれたりしてもさ、君は口では文句を言うけれど、態度はいつも変わらない」
水無月が、ふふっと笑って俺に目を合わせてきた。なぜかその視線はいつものふざけた感じとは違う別の表情が滲み出ていた。
どうしたんだ、急に。あのおちゃらけたセクハラ紛いの感じで俺に抱きついたんじゃないのか?
微かに漏れ出るいつもと違う表情の意味を読み取ろうとしたとき、あっ、と水無月が何かに気がついて俺の後ろに視線を向けた。
「木崎君、ターミナルビルの灯りが」
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