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第47話
俺は窓の隅から通勤中の人達を見ながら、知った顔がチラホラ居るな、と思った。そして、その中に佐竹さんの姿を見つけて思わず、さっと窓から顔を隠す。
「どうした? 木崎君」
「いや、知り合いの顔が見えたんで」
「えっ、どの人?」
水無月は面白がって額がくっつくかと思うほどに窓へと顔を寄せた。誰? と尚も聞く彼に俺は仕方無しに、
「ほら、今、信号待ちをしている紺色のトレンチにグレーのマフラーをした人ですよ」
「うーん。ああ、見つけた! あの……」
急に水無月の弾んだ声が聴こえなくなった。
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