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第48話

 俺は窓から離れてカップに残ったコーヒーを飲み干すと、静かになったままで窓の外へと視線を向ける彼の横顔を眺める。その顔はいつになく真剣で、俺は少し不審に感じた。 (とうとう、道行く人に指でもさされて騒がれたか?)  水無月の様子に声を掛けようとした時、彼はぼつりと「見つけた」と小さく囁いた。 「は? 何を見つけたんです?」  彼が見たものが気になって、また窓辺へと近づいた。すると何を思ったのか彼は近寄った俺の胸ぐらを掴むと強く引き寄せて、ぎゅううっと抱きついてきた。 「ちっ、ちょっと! 水無月さんっ、見える、外から見えるからっ」 「大丈夫、この角度ならギリギリ君の顔は解らない」

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