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第55話

 二人でここに泊まっている事は当然誰にも言っていない。  朝は俺が早めに部屋を出てレストランで朝食を採ってからそのまま会社に向かう。水無月は俺がオフィスに着いた頃にホテルを出て出社してくる、というように周囲にバレないようにと気を使った。  ベッドから起き上がり洗面を済ませ、服を着替えた俺は、まだバスローブ姿で窓際に立つ水無月に、 「少しでも朝飯を喰ったほうが体温上げるにはいいですよ?」 「うーん、そうなんだろうけれど、小さい頃から朝食を食べると、どうにも一日胃がもたれるんだよね」 (まだ若いのに何という年寄り臭いことを)  俺は机の上に置いてある朝食チケットを手にすると、 「じゃあ、俺は先に出ますからね」

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