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第57話

 暢気に問いかけた俺の手を振り向きざまに水無月は掴んだ。そのひやりとした感触にぶるりと背中を震わせた俺の腕を水無月は更に強く引くと、いきなり冷たい両手で俺の頬を挟んで唇を押しつけてきた。 「ムグッ、んんんっ!?」  急な事に何が起こっているのか理解出来ない。大きく見開いた視線の先は焦点が合わない水無月の顔が写っている。挟まれた両頬は冷たいのに、なぜ、重なる唇はこんなにも熱く滑っているんだ?  俺の下唇を咥えて、ちゅっ、と音を立てながら水無月の顔が離れていく。いまだに自分に起こっていることの処理が出来ない俺に、矢継ぎ早に水無月の声が飛んできた。 「抱きしめてっ、後ろから!」

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