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第58話
なぜか彼は景色を臨めるあの窓に右手を突いて、早くと急かした。俺は彼の気迫に圧されて、言われた通りに水無月の後ろから前に両手を廻した。
「こ、こうでいいですか?」
「もっと強く! ぎゅっ、て!」
「ええっ、じゃあこれくらい?」
かなり力を入れて彼を抱きしめる。ちょっと苦しくなったのか、窓に手のひらを突く水無月が、フッと吐息を洩らした。いくらなんでも力を入れすぎたとその縛めを弛めると、今度は顔を俺のほうに向けて、
「さわって」
さわれ? 触れって、
「どこを?」
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