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第65話
ちゅっ、と高い音を立て水無月の唇を離す。
彼は俺の手の動きに高い声を合わせるとガクガクと膝を震わせ始めた。左手も窓に付け、それでも快感に崩れ落ちそうになって、とうとう額もガラスに付けて体を支えた。
俺は水無月の背中に顔を隠すように少し屈んで、彼の肩越しに眼下の景色を見た。
そこには冬の寒さに俯き加減に信号待ちをする数人の人達。ターミナルビルから歩いてくる人も皆、前だけを見つめて、俺達を見上げている人は居ないようだ。
歩行者信号が青になったのか、待っていた人達が一斉に歩き始める。
それに少しホッとしたとき、俺の驚異的な視力は青になったにも拘わらず、信号機の支柱の影に立つ人物がいることを目に捉えた。
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