76 / 140
第76話
「……まあ、ちょっと今朝の件は俺も調子に乗ったというかなんと言うか……」
少し歯切れ悪く呟く俺に水無月が息を詰めて視線を合わせてくる。
「俺も明確に断らなかったのも悪いんで、もう謝らないでください」
ぼそりと言った俺の台詞に彼は身を乗り出さんばかりに、
「まだ僕の湯たんぽでいてくれるの?」
「……だって、水無月さんがここにいるのは残り五日じゃないですか。最後のテストの追い込みもあるから、このまま夜はお邪魔させてもらいますよ」
水無月はホッとしたように、ありがとう、と満面の笑みを俺に向けた。
その顔がこれまた可愛らしく見えて、俺の心臓が大きく鼓動する。彼に気付かれ無いように少し冷めた茶をゴクンと嚥下した時だった。
ともだちにシェアしよう!