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第78話
俺はそこで水無月の顔を見て、言葉を詰まらせた。
目の前に座る彼は、なぜか大きく目を見開いて隣に立つ佐竹さんを見上げている。その表情にはちょっとでも突っついたら、ぱんっと弾けそうな緊張が見てとれた。
(こんな彼の表情、初めて見た……)
途中で言葉を萎ませた俺に佐竹さんは、うん? と小さく首を傾げると、そこで初めて隣に座る水無月へと視線を向けた。そしてみるみる内に、佐竹さんの顔も驚きが満面に浮かび上がると、
「お前……、馨?」
今度は俺がびっくりする番だ。
驚きの表情で水無月を見下ろす佐竹さんと、緊張を醸し出して佐竹さんを見上げる水無月の二人に俺は忙しなく視線を動かした。
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