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第94話
「金なんかいらないんだよ。俺が協力するのをオッケーしたから、あんたもその気なんだと思っていたのに」
「最初からソレは無しだと言ったはずだ。君も承諾したから部屋に入れたのに。やっぱり知らない奴に頼むんじゃ無かった」
「はぁ? 朝っぱらからあんな事を俺に頼んでおいて、よく言うな。据え膳喰わされたこっちの身にもなってみろよ?」
「……わかった。でもやっぱりダメだ。君の言い値を支払うから今夜は帰って……」
「ふざけんなっ! 金じゃ無くて、あんたを抱かせろって言ってんだよっ!」
ザッ! とアスファルトを踏み締める乾いた音と、やめろっ、と短い悲鳴がホテルの裏路地に響いた。咄嗟に俺は暗がりの中で掴み合う人影の間に割って入ると、
「てめえ、何してんだよ!?」
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