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第96話

 全くその気は無いのだが俺の気迫を本気と取ったのか、若造は小さく悲鳴をあげると、「なっ、何もしてませんよっ! 本当に何も無かったからっ」と訳の解らない事を喚いてその場を逃げ出した。  けっ、根性無しが。親の脛を囓っている分際で他人を脅そうなんて百年早いわ。  体を廻った興奮が醒めないうちに後ろに立ち尽くす水無月へと振り返る。今度は彼のほうが俺の怒りにあてられて肩を竦めていた。そんな様子に俺はまだ苛つく口調で、 「ほら、言わんこっちゃない。不特定の奴らを相手にすると痛い目見るって!」  俺の厳しい言葉に水無月がきつく瞼を閉じる。立ち尽くす水無月の肩に手を置くと、途端に彼の体がビクッと大きく震えた。

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