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第97話

「どうして上手くあしらえなかったんだ? あんたならあんなガキ、いつもの調子でやり過ごせただろ?」  いまだにカタカタと体を細かく震わせている水無月が、顔をあげて俺を見た。街灯の薄い灯りに浮かんだその表情に俺は思わず息を飲む。  色の白いその顔は青ざめて、大きく開かれた瞳もうっすらと涙で潤んでいる。小さく開いた唇も細かく震えて、今にも声をあげて泣き出しそうだ。 「水無月さん?」  いつもと様子の違う水無月に問いかけると彼はビクリと肩を動かして、左手で俺のコートの裾を掴んで頭を右肩に預けてきた。 (これは寒いから震えているんじゃないな)

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