101 / 140
第101話
まだ話の終わらない水無月を後ろからそっと抱きしめる。予想もしていなかったのか彼は大きく息を呑んで口をつぐんだ。
じっと動きを止めている水無月の手から、カップを取り上げて傍のテーブルに除けると、襟足から覗くうなじに唇を這わせた。
「……もしかして、昨夜、助けた礼が欲しいって事かな……」
強張った呟きが頼り無げに響く。でも俺はそれには応えずにわざと音を立てて水無月の左の耳朶を唇で挟んだ。フッ、と微かに息を吹きかけると、ぞくぞくとした彼の体の震えが抱きしめた腕に伝わってきた。
「あの……、今朝はこんなこと……」
無言でバスローブの袷から手を突っ込んだ。素肌の胸に手のひらを這わせると、水無月が少し嫌そうに身を捩った。
ともだちにシェアしよう!