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第103話
「ごめん。でもちょっとしたお仕置き」
そう言って彼の緩くウェーブのかかった茶色の髪をくしゃりと撫でた。
「俺は先に出るからさ。遅れないでよ」
うん、と腑抜けた返事をする水無月を置いて、俺はホテルの部屋から出ていった。
(おかしいな。俺の検討違いか?)
今日はここでの作業の最終日。明日には客先へと赴いてのテストが始まる。水無月がこの街に居るのは今夜が最後だ。
あれから毎朝、ホテルの部屋の窓際で水無月を抱きしめているが、奴はあの歩行者信号機の柱の陰に立って、じっとこちらを見上げるだけで何のアクションも起こしてこない。
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