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第110話

***  ピンポーン。  時計を見ると午後十時。濡れた髪を乾かそうとドライヤーを手に取った途端、軽やかなチャイムが部屋に鳴り響いた。  ドライヤーを置いて洗面台から離れる。首からかけたタオルで頭を拭きながら、ドアへと近づくまでに何度もその音が鳴った。  誰が鳴らしているのかはわかっている。ロックを外し、ドアを開けると水無月馨は廊下に立つ人物に盛大に文句を言った。 「木崎君、コンビニに行くのなら鍵は忘れるなってあれほど……」  言い終わらないうちにドアを思い切り引き開けられた。  そのあまりの勢いにノブを持っていた手が引っ張られて前へとよろけてしまう。転ばないように一歩足を踏み出して、乱暴者を睨み付けようとした瞳は、思わぬ人物の姿を写して驚愕に見開かれた。

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