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第138話
「大丈夫。仕事中は今まで通り水無月さんって呼ぶよ。でも代わりに二人の時は、ね?」
「……だったら、今は手を離してよ」
シティホテルと駅を結ぶ大きな橋の前の横断歩道で信号待ちをする。
横断歩道の向こう側には駅からそれぞれの職場へ向かう人達が寒そうに肩を竦めて並んでいる。その人達の中に佐竹の姿を見つけて、繋いでいた馨の手がビクンと震えた。
信号が青に変わり、人々が流れてくる。俺は馨の手を離すとその背中に軽く手のひらを添えた。少し青い顔をした馨は何かを決心したようにきゅっと唇を結んで歩き始めた。
少しずつ佐竹との距離が近くなる。馨の緊張が背中に添えた手のひらに伝わる。
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