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第11話 嘘偽りの“好き” <Side 浦田
どうせ手に入らないのなら、その肉体だけでも欲しかった。
一時の温もり。一瞬の灼熱。
偽りだと知っている。
嘘でも、かまわない。
“好きだ”と紡がれる言葉は、僕の身体を熱くする。
嘘偽りだとわかっているのに、僕の気分は昂揚する。
近堂に罵られ虐げられる妄想は、僕の快感を加速させた。
何もない北校舎になど、人は来ない。
わかっているのに、心臓がざわつく。
阿妻に注がれた精液を溢さぬよう、腹を下した時みたいに、尻に力を入れ歩む。
それでも溢 れてしまいそうで、片手で緩くなっている孔を押さえた。
尻を押さえながら、片手で前を隠すコトなど出来るはずもなく。
萎えるコトの知らないカウパー塗れのペニスを曝し歩く。
こんな格好を見られるわけにはいかない。
教師として、大人として、有り得ない。
恥ずかしさと不快感に嫌悪を覚えているはずなのに、心の端っこで、誰かに見られ嘲笑われるコトを望んでいる。
羞恥が、背徳が、スリルが、僕の興奮を煽り立てた。
やっとの思いで辿り着いた教室。
そっと顔だけを覗かせ、中の様子を窺う。
すぐ側で背を向け立っている阿妻と、悠然と椅子に座り、雪野から奉仕を受ける熊原。
いつ誰が来るかわからない空間。
でも今は、廊下に人は居ない。
汚れた下半身を曝し、教室内へと入れば、3人の視線が僕に向くコトは明白だ。
出来るコトなら、教室と廊下を隔てる壁を目隠しに、下着とスラックスを取り戻したかった。
阿妻の指先に引っ掛かっている地味な下着は、直ぐに僕の物だと判別できた。
こちらに背を向けている阿妻は、手持ち無沙汰に指先で僕の下着を、くるくると弄ぶ。
教室に入らなくても届きそうな距離に、それを奪い返そうと手を伸ばす。
あとほんの少しで届きそうだったのに、阿妻の手が、するりと逃げた。
「なに勝手に取ろうとしてんの?」
振り返り、にっこりとした笑顔を浮かべた阿妻は、下着ごと両手を背に隠す。
「っ。……返、して」
壁で身体を隠しながら、伝えた意思に、阿妻がのっそりと廊下へと出てきた。
「興奮した?」
ニヤつきながら問われた言葉に、僕は視線を背ける。
僕の顔を赤くする熱の正体が、羞恥なのか、興奮なのか、定かじゃない。
露出している僕の下半身へと阿妻の手が伸びてくる。
勃起したままのペニスの先端を、指先で捏ねられた。
離れた指先とペニスの間に、ねっとりとした糸が渡り、重みでぷつりと途切れる。
「涎垂らしながら歩いてきたのバレバレ」
くすくすと嗤いながら、僕の歩いてきた廊下へと視線を投げた。
そこには点々とした水滴が、興奮の痕跡を残していた。
「でも、オレの子種は、溢さなかったみたいだね」
“えらい、えらい”と棒読みで紡がれた言葉に、頭を撫でられる。
ただ、その手は僕のカウパーで濡れた手だ。
褒めているように見せかけながら、手の汚れを僕の髪に擦 りつけただけ。
不服げに顔を背ける僕に、阿妻の手が僕の腕を掴む。
「まぁ、入んなよ」
腕を引かれ、教室の中へと引き摺られる。
「……っ」
引かれた身体に、力の入った腹が中に出されていた阿妻の精液を、押し出してしまう。
ごぷっという濁った音と、尻から滴る濡れた感触に、溢れてしまったのだと直ぐに気がついた。
尻を押さえ、思わず座り込む。
“溢すな”という阿妻の命令に従えなかった。
恐々 と見上げた阿妻の顔は、無邪気な笑みを浮かべている。
「あぁ、溢しちゃったね。“お仕置き”決定だね」
他意の無さそうな笑顔のまま、さらりと紡がれる声に、僕の心が震え上がる。
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