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第9話

 結局恭介は俺を捨てず、かと言って仲間を売ることもせずに抗争の道を選んだ。これがヤクザの義理人情ってやつなのだろうか。抗争はニュースにもなった。要は一次団体のゴタゴタだが、敵対する幹部の後ろにはこの前シノギに噛ませろと言った二次団体がついているらしい。恭介の部下からはさらにその後ろに中華系マフィアがついている可能性があると漏れ聞こえてきた。  中華系マフィアが絡んでいるとなると俺も他人事ではない。その会話に入っていってどこのマフィアか聞いた。 「ねえ、その中華系マフィアって何ていう名前ナノ?」 「確か五合会とかいう……」  何てこった。まさに古巣の組織の上部組織だ。ただ五合会も一枚岩ではないのでその中のいくつかの組織がバックアップしていると言うだけだろうが……マフィアが絡むとなると一気に血生臭い抗争になる。俺も恭介を手伝いたいが、俺は今桐谷 皓也だ。李 皓然であれば全面的にバックアップできただろうが、李 皓然のままでは恭介に出会えなかった。運命とは皮肉なものだ。  俺はその夜恭介に相談を持ちかけることにした。恭介の周りにも屈強なボディガードはいるが、おそらく実戦経験は俺の方が上だろう。だから恭介のボディガードに俺も加えてもらおうと言うものだ。自分の大切なものは自分の責任で守りたい。  恭介が帰宅すると夕飯を出した。今日は金目鯛の煮付けとほうれん草のおひたし、じゃがいもの味噌汁だ。俺も随分と料理が上手くなったなと感じる。金目鯛の煮付けは出汁が効いていて味の濃さはおかずにぴったりだし、身はびっくりするほど柔らかく、だが煮崩れしないで作ることができた。  恭介は金目鯛の煮付けを見て「これもレシピを検索して作ったのか?」と驚いた様子だった。味についてはベタ褒めで料理の才能があるとか料亭が開けるとか色々と言ってくれた。 「……恭介、話がアルんだけど」  料理をあらかた食べ終わったのでビールを出して金目鯛の残りを突っつきながら晩酌へと移行した。 「何だ?急に」 「僕を恭介のボディガードに加えて欲シイ」 「……何でまたそんなことを?」  門前払いされる覚悟で切り出したが、とりあえず、話は聞いてくれるらしい。 「抗争で相手のバックアップに五合会の名前があるコトを聞いた」 「……あいつらが話したんだな……全く……」 「五合会が後ろにつくとなると、抗争、危ない。かなり血生臭くなると思う。恭介も危ない、から僕をボディガードに加えて欲しい」 「今いる面子では不安ということか?」 「この前だってあっという間に侵入サレたでしょ?強そうだけど、実戦経験が圧倒的に足りていない、気がスル」 「お前なら……実戦経験があるというのか?」 「少なくとも彼らよりは、アル。多分恭介のボディガード全員一気に殺セルくらいは」  平和な日本でぬくぬくボディガードをやっている……おそらく何らかの武道は経験していると思われるが、そんなのは役に立たない。俺は割と正確に相手の力量を測ることができるが、恭介のボディガードじゃチンピラ相手の抑止力になっても、本気で殺しにかかってくる相手には荷が勝ちすぎる。 「……それは頼もしい、が、俺がよろしくとでも言うと思ったか?俺はお前を守りたい、お前を矢面に立たせるつもりはないんだ」 「それは僕もです、恭介。だからチームになりたいんデス。僕が恭介を守って、恭介が俺を守るチームになりたいんデス」 「……」 「ボディガードの皆さんが納得シナイなら、一人ずつ勝負スル。全員に勝てたら名実ともに恭介のボディガードにしてホシイ」 「相手は柔道や空手の有段者だぞ?」 「……でも人を殺したり殺されそうになったことはないでショ?」 「……そう、だな……」  思い沈黙。暗に俺が人を殺したことがあると白状したようなものだ。俺はこんな事を恭介に言ったら嫌われると思って黙っていたが、それ以上に恭介の命が大切だと思ったので包み隠さず言った。 「僕は……俺は何人殺したかわからないし、何回殺されそうになったかもわからナイ。俺はそういう人間なんだ……黙っててゴメン」 「……いや、……」 「だからこそ俺に任せてほしい。恭介のプライベートのボディガードとして。無理を言っていることはわかってイル」 「……上層部からは俺の身の回りを警戒する人員を増やすよう要請は来ている。だから形式的にお前を雇うことはできる」 「じゃあ……」 「……あくまで形式的にだからな、それと、身を挺して庇うようなことは絶対するなよ」 「わかった!アリガトウ」  俺は恭介に抱きついた。これで仕事中の恭介を守ることができる。俺はスーツケースの中からスーツを取り出し、早速クリーニングに出すことにした。また、敵の面子次第では身バレする可能性があるので伊達メガネを買い、髪の毛の色を明るく染めることにした。  警察への連絡は迷ったが、ニュースになった時点で抗争の情報と敵のバックに中華系マフィアがいることはわかっているだろうから、俺の方からは990(緊急事態)のコードを送って向こうからの連絡をまった。すぐに電話がかかってくる。 「佐伯か?俺だけど……そうその件で。端的にいうと前原 恭介の個人的なボディガードをやることになッタ。まあ一宿一飯の恩義ってヤツ。そうそう。派手には動かないしそっちに情報も流しはしナイ。うん、よろしく頼む」  そう言って電話を切った。 「警察か?」 「そう、前も話シタ人。ねえ恭介、このマンションって防音だよネ?」 「ああ、そうだが」 「今いるボディガードの他のシフトの人もいるでしょ?その人たち呼べル?」 「呼べるが……どうする気だ?」 「付け焼き刃でもまあマシだカラ。訓練スル」 「……わかったよ……連絡する」  それから二十分程度で全員が揃った。各シフト四人の合計十六人だ。大の男がこれだけ集まると部屋に圧迫感が生まれる。それに各々何らかの武道経験者ではあるらしく、自信満々といったところで、明らかに俺は舐められているのを雰囲気で感じ取った。前原が言うから来たけれど……という表情で俺を見つめる。  用意してもらったモデルガンとダミーナイフを使い、訓練をする。面倒なので一番強そうなやつを呼んでナイフ同士で俺と訓練をすることにした。  ナイフは最初は懐に締まってあるところから始めることとし、俺ではなく相手のタイミングで襲いかかってもらうことにした。  しばしの沈黙の後、相手の気配を感じた瞬間に俺はナイフを取り出し、相手の攻撃を交わすと、体を翻し相手の後ろに回り込み喉元にナイフを当てた。  場が沈黙に包まれる。まさか一見華奢そうな俺に負けるとは思わなかったのだろう。  今度は交代して俺が攻める番にした。俺は殺気を完璧に消し、相手が気付く前に相手の喉元にナイフを当てた。  また場が沈黙に包まれる。 「いいか?本気で相手を殺そうと思ったら殺気を消せ、気取られルナ。殺気を消す方法は……相手をスイカか何かだと思うこトダ。人間性を捨テロ。  そして本気で守ろうと思ったら全神経を集中し続けロ。相手がわかったらそいつをスイカか何かだと思って殺すコトダ。  一番大事なのは、相手に友人や恋人、妻や子供がいるかもしれないということを頭から排除し、スイカだと思って切ることダ。殺すんじゃない、スイカを切るダケダ。スイカを切るのに躊躇いは一切イラナイ」  場は男たちの真剣な雰囲気に包まれている。俺の一挙手一投足に注目が集まる。 「あとは、各々の武道の経験を生かしてやってクレ。ちなみに俺はシステマを軍人から習った。システマの基本原則は、Keep breathing、Keep relaxed、Keep straight posture、Keep movingだが一朝一夕で身につくものではナイ。各々のやってきた武道を信じろ」  同様にモデルガンを使った訓練も行った。訓練では「躊躇いなくスイカを撃て」とだけ教えた。  二時間程度の訓練で十六人全員とナイフを交えたが、やはりみんな鈍であった。予想はしていたが早く研ぎ澄ませないと俺も前原も、また彼ら自身も危ない。モデルガンを使った訓練はもっとダメだった。  でも彼等の力量を知れたことで俺自身に緊張感が持てたし、細身の俺に負けたことで彼等自身の緊張感も高まったようで良かった。これからは警備シフトにプラスして一時間ほどの訓練をすると言っても反発は起きなかった。  訓練を終え、シフトの人間だけ残して他は帰った後、俺は汗をかいたのでシャワーに入った。恭介はボディガードと話があるとのことで俺は久しぶりに一人で風呂へ入った。  寝室に入ってしばらくすると風呂から出た恭介が入ってきた。 「訓練お疲れ」 「お疲れサマです。急な話なのに対応ありがとうゴザイマシタ」  ぎゅっと抱きしめながら言う。俺は不安に思っていたことを口にした。 「恭介、僕がこれまでたくさん人を殺して来たことを知って嫌いになッタ?」 「……驚きはしたが、まあこれだけ傷があれば真っ当な人生は歩んじゃいねえってことは薄々気づいてたしな。まあせいぜい喧嘩くらいだとは思ってたが……。  俺だって多分お前ほどじゃないけど間接的に何人も殺してる。破れ鍋に綴じ蓋ってやつだよ、俺たちは」 「破れ鍋に……?」 「似たもの同士ってことだよ、お似合いだってこった」 「嫌いにならナイ?」 「ああ……好きだよ」  より強く抱きしめられる。そのままゆっくりと押し倒された。恭介の髪はドライヤーが甘く、まだ若干濡れていてそれが男の色香になっている。 「それにしても、な」 「……ナニ?」 「俺の下でいつも可愛く喘いでる皓也があんなに強いなんて……」 「もう、何でそんなこと言うノ……?」 「正直、すげえ興奮した、わかるか?」  そう言って性器を俺のものと擦り合わせてくる。布の上からでもわかるそれは熱と硬度を帯びていた。  恭介は自分の服を脱ぎながら俺の服を脱がせると、俺の首筋を甘噛みしたりキスマークを残しながら乳首をいじりだす。 「あんなに強い奴が俺のものだって……皆にわからせてやらなきゃな」  そう言いながらわざと見える位置にキスマークを残す。俺の首はおそらく花びらで作った首飾りをしているように見えることだろう。 「あ、あ……っ」  乳首をいじられると反射的に後孔まで疼き出す身体にした張本人は何食わぬ顔で俺の太ももにもキスマークをつける。しかし中心には触れてこないのがもどかしい。 「あっ……ねえ……っ」  腰を揺らしながらねだると、それでも恭介は「んー?」としらばっくれた。 「お、……おちんちんも、して……っ」 「どう言うふうにだ?」 「舐めて、吸って、メチャクチャにして……ぇ」 「仰せのままに」  笑いながら恭介は俺の中心を口に含む。舐めころがし先端を弱く吸ってくる。俺はたまらず恭介の頭を掴み、自分から腰振った。 「あっ……キモチ、いい……っ」  すると恭介も段々と先端を吸う力を強くしてきた。今度は俺の腰が止まってしまう。 「あ、あああっ、だめ、そんなに強く吸ったら……でちゃうぅ……っ」 「俺の口ん中にぶちまけろ……皓也」 「だ、め、……っ」  恭介は竿の部分も扱き出し、あっという間に俺を追い詰めた。 「あ、あ、あ……でる、でる……っ」  ジュッと勢いよく吸われるがままに俺は吐精した。恭介はそのままそれを飲み込む。 「可愛い皓也、もっと気持ち良くしてやるからな」  恭介はベッドサイドからローションを取り出すと俺の後孔に塗り込み始めた。前をいじられている段階ですでに飢えていたその孔はあっという間に恭介の指をむしゃぶる。 「あ、あああっ、あ、」  コリコリしたところを攻められるとまたも射精感が襲ってくる。恭介はさらに奥まで十分に慣らすと、恭介自身をあてがった。ゆっくりと確実に貫かれる間、俺の口の中に恭介の指が入れられ、俺の上顎を愛撫してくる。 「んんんん……っ、はあっ、ん……っ」  恭介の全体が収まると一旦動きを止めて、俺にキスをしてきた。お互いを食い合うような熱いキス。恭介の脈動が後孔から伝わってきて、俺自身もかなり昂っている。 「ん……っ、う……はあっ、」  呼吸をすることすら惜しくて恭介のキスに夢中になっていると後孔の恭介が律動を開始した。 「あっ、あっ、やっ」  恭介は手前のコリコリしたところを責めたかと思えば、最奥のぐぽぐぽしたところも攻めてきて俺を翻弄する。すでに快楽の波に飲まれている俺はされるがままだ。 「ああっ、あ、あああっ、恭介ぇ」 「……っ、ほんと可愛い……なっ」  恭介は俺と繋がったまま、俺をひっくり返し後背位にするとさらに奥を責め立ててきた。 「あああっ、だめっ、も……だめ……」 「あんなにつええのに後ろグポグポされてイっちゃうのか?」 「だ、め、お尻で感じちゃうの……っ、恭介のキモチイ……っ、マタでちゃう……っ」 「お尻だけでちんちんから精液出ちゃうんだよな?可愛い皓也、イっていいぞ」  そう言ってさらに激しく攻め立てるともう俺は我慢ができない。 「あ、あ、恭介のおちんちんででちゃう、でちゃうぅ……っ」  中を痙攣させながら俺が射精すると恭介も次いで俺の最奥に精液を注ぎ込んだ。

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