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第4話 お兄さんのともだち
夏の夕方6時は、まだまだ空も明るくてうだる様な暑さも引かない時間。
川北くんの家に着くと玄関ドアが開けられて、中からお兄さんが顔を出したから僕も直ぐに中へと入って行った。
玄関のところには何足かのスニーカーがあって不思議に思った。
それに、廊下に漏れ聞こえる賑やかな声。その声は複数の人の声で。
「お~~~っ、かっわいー!」
リビングのドアを開けて、中に目をやるなりそう云われて一瞬身体が怯む。
目の前に3人の男子がいて、多分お兄さんの友達といったところ。
「だろ~?うちのガッコの女子より可愛くねぇ?」
川北くんのお兄さんは、僕の背中に手を置いて部屋に押しやると周りの友達に自慢気に云った。
「こっちおいでって。怖くないからさー。可愛い顔してるし肌もツルンツルン。中一だったよね、もう彼女とか居るの?」
一人の人に聞かれて「いいえ」と首を振った。
「いるわけねーじゃん。まだ下の毛もチョロっとしか生えてないんだからさ。」
「えーーー、かわい~、見たいみたい、見せてみ。」
川北くんのお兄さんより大きな人もいて、僕はふざけて云われているとしても怖くなった。
身体が固まって言葉も出て来なくなる。
「おっとー、まだ早いよ~。せっかく親が居ないのにさ、夜は長いし腹も減ったし。取り敢えず何か食おうよ。」
川北くんのお兄さんがみんなに向かって云った。
その言葉に少しだけホッとする。でも、この場から逃げられない様な気がしているのは変わらなかった。
晩ご飯は出前のピザを取って食べた。僕はこういうのを食べた事が無くて、勿論スーパーに売っているパックに入ったのは食べた事もあるけど、アツアツのチーズが流れて落ちるようなのは初めて。口に入れた途端、チーズとマヨネーズとがトマトの酸味と合わさって、今まで食べた中で一番おいしいと思った。
「おいしい」
出されたジュースもお代わりすると、僕のお腹はパンパンになる。
周りの人達も腹を擦りながら嬉しそうにしているし、さっきの怖さは自然と無くなって、誰かがゲームを始めようと云うから食べた皿をキッチンへと持って行った。
お兄さんたちがゲームをしているのを見ながら、時間はあっという間に過ぎていく。時計の針が9時をまわった頃、ゲームに夢中になっている人もチラチラと時間を確認している。みんな家に帰るのかと思い、僕も片づけを始めようとした時だった。
「泊まれる人ー」
「「はーい。」」
川北くんのお兄さんが訊くと二人が手を上げる。
顔を向けると、一番大きな身体の人と川北くんのお兄さんより小柄な人が手を上げていた。
高校生だから外泊とかしてもいいのか.....?
そう思い、でも僕は帰るつもりで片付けたゴミを台所の隅にやった。
「じゃあ、僕はもう帰ります。ごちそうさまでした。」
そう云ってみんなの前に立った時だ。
「何云ってんの?ジュンはこれからでしょ。」
「え?」
「何、食うだけ食って帰るつもり?まさか、だよな~」
一人がそう云って僕の腕を掴む。
「そうそう、5000円やるって云ったじゃん。ご飯は別だから安心しな。」
お兄さんの声が今までとは違っていて、僕は背筋が凍る様な寒気と緊張感に襲われた。
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