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第6話 お兄さんの秘密

 頬に当たる硬く湿ったものが不快で仕方ない。 汗臭い様な変な匂いを放ち、僕の頬に擦りつけると「やべー、気持ちいいー、」とお兄さんの友達は云う。 それを見ながらか、周りでは笑い声も聴こえる。  僕はしっかり目を閉じたまま。決して開けるもんかと我慢した。 とにかく早く終わってほしい。いつものお兄さんの様に、チンチンの先っぽから白い精液が出たらおしまい、ってなったらいいのに.......。 「うおっ、マジでやべー。ちょっとトイレ行って来る。」 笑い声と共にチンチンが頬から離されると、その人はトイレに向かったみたいで、僕はホッと胸を撫で下ろした。やっと終わりだ。 「じゃあ、観察~。次はお尻見せて。」 「えッ、.......」  身構える前に身体はひっくり返されて、僕はソファーの上に上半身を乗せるとお尻を突き出す格好にさせられた。今度は本当に怖かった。 「ケツの穴って自分じゃ見えないけどさ、こういう風になってんだね。なんかカワイイ。」 「ホモってさぁ、ケツの穴に入れるんだろ?あれ、マジではいるのか?こんなとこ、ムリっしょ。」 「でもさ、うんこが出るんだから、あの太さなら入るって事?」 「......げーっ、ちょっと引くワー。」  僕の尻を見ながらそんな会話をされて、どうしていいのか分からなかった。 でも、それ以上は触って来る様子もなくて、ただ興味本位で見たかっただけなのかと思った。 「もう、いいかなー。やっぱ女のおっぱいの方が見たいよ。......オレ、帰るから。」 「おう、じゃあ、またな。」「バイバイ」  一人の人は帰ったみたいだった。 僕はまだソファーに突っ伏したままじっとしている。変に動いて何かされたら嫌だし、川北くんのお兄さんが何か云うまではじっとしていようと思う。 「ヤバかったー、中ボーに興奮してイクとか、オレ、マジでホモになるとこだったわ。」  トイレから戻った人がそう云いながら入口で笑う。  お兄さんはみんなに云ってなかったんだ、と思った。 僕のチンチンを触りながら自分のも触って興奮して、「イク」って云いながら精液を出しちゃう事。そこは二人の秘密って事なんだね。ちょっと安心した。 「DVD持ってきたから後で観ようぜ。巨乳先生だってさ。兄貴のパクッてきたからさぁ。」 「いいね、いいねぇ。」  友達の二人がそう云いながら離れて行くのが分かって、漸く眼を開けて周りを見る僕。 お兄さんが一人僕の後ろに居て、じっとお尻を見ている。 「あのぅ、......僕、帰ってもいいですか?」  小さな声で訊いてみた。 「........ぁ、うん、いいよ。」  そう云われて漸くTシャツを着る事が出来て、ズボンも穿き直して支度をする。 「これ、やるから。.........親には云うなよ。あと、アツシにも。」 「......はい、.....じゃあ、さようなら。」  5000円札を四つ折りにしてポケットに突っ込むと、僕は玄関へと向かった。 ドアを開けると、一瞬で身体の力が抜けるが、早く家に帰りたいと思って走り出す。 辺りは流石に真っ暗で、街路樹のところに街灯があるだけで民家の明かりしかない道を必死で駆け抜ける。この場から一刻も早く逃げたかった。 そして、もうこんな事はよそうと、この時は本気で思っていた。

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