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第17話 経験
大皿に肉野菜炒めをドーンと盛り付けて、それにナスと長ネギのみそ汁をつけてテーブルに出す。他には玉子焼きと冷奴。これが今夜のおかずだった。
「すっげーぇな、大原。これならひとり暮らしカンペキじゃん。」
「だろ?!うちのオヤジなんて大原が女の子だったら嫁に来てほしいくらいって云ってたんだよ、な。」
「.....あー、うん、そうだったっけね。」
木村くんの云った事は本当だけど、朝比くんの前では云わない方が良かったかも。
ほら、ちょっと表情が曇っちゃったし.....。
「あ、この玉子焼き甘くしてみたんだけどさ、普段はどんなの食べてる?しょっぱい方が良かったかな。」
僕が話題を変えようと訊いてみる。と、すぐに木村くんは「うちなんて目玉焼きしか作んないし。コレ、ちょっと新鮮かも。」と箸をつける。
「うちは多分しょっぱい系かなぁ。」
朝比くんもそう云いながら玉子焼きを頬張った。
「美味いねぇ、甘いのもいいかも。」
「うん、ホント。大原さぁ、調理学校とかに行ってもいいんじゃねぇ?」
朝比くんがもごもごと食べながら云う。
「料理は仕方なくやってるだけで、特に料理人になろうとかは思ってないんだよね。僕は美容師の方が興味あるし。」
「へぇ、.....美味いのにな、勿体無い。けどまぁ、美容師も向いてるかも。大原ってイケメンじゃん。オンナの客とかいっぱい指名入りそう。」
「なんか、指名って、ホストみたいだねぇ、ははは、.....」
「ホントだ、....でも、イケるかもしんないよ。」
二人が笑いながら僕の進路を勝手に想像してくれるけど、水商売の母親を小さい時から見て来てる僕としては、そこは避けたい職業だった。それに、女の人は面倒臭そうだし。
食事の後片付けは朝比くんと木村くんがしてくれて、その間に僕はシャワーを借りる。
気分的には修学旅行みたいで、ちょっと楽しかった。
シャワーの後でゲームをしたりお菓子を食べたり、普通の高校生の休日って感じだ。
それに、深夜になると妙にテンションが上がっちゃって、朝比くんがゲームを終えると動画を検索し出した。
「.....あのさ、コレ、ちょっと見たくねぇ?」
そう云って僕と木村くんにPCの画面を見せる。
「ぅわ、.......」
それは、いわゆるセックス動画というもので、ほんの数分ぐらいだろうかモザイクがかかっているが男同士のソレだった。
「ちょ、....何見せてんだよ、朝比。」
恥ずかしそうに朝比くんの背中を叩くと、木村くんは横を向いた。
僕は、経験者。でも、こういう時の反応はどうしたらいいのか分からない。
ひと言も言葉が出て来なくて黙っていたら、朝比くんが急に「ちょっとヤってみない?」と言い出した。マジか??と心の中で叫ぶが、表情に表すのもどうしようかと困惑してしまう。
「大原、.....お前女役出来る?」
「.............え」
朝比くんの質問に、流石の僕も引いてしまう。
それを云うなら僕より木村くんだよね。カレの方が華奢だし.......。
おもわずそんな事を真剣に考えてしまった。そんな事、僕ら三人でどうするつもりなんだろう。
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