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第18話 ウブ
朝比くんの突拍子の無い提案に戸惑いながら、僕は一歩引いて二人の様子を見ていた。
二人の学校での様子から、多分だけどキスや触りっこぐらいはしていると思っていた。
それを確認するのは変だけど、どうして僕にオンナ役をやってと云ったのか.....
ひょっとして僕がウリをやってるのに気づいている?.....イヤ、まさか、.....
「ウソだよね、僕が出来るわけないじゃん!二人でやんなよ。木村くんが女役で。」
「......!」
僕の言葉に、何故か二人はハッと驚いた顔で互いを見合う。
今更、僕に気付かれてビックリするとか、......
「僕はリビングで寝させてもらうから、二階にはあがって来ないよ。ごゆっくり。」
そう云うと自分の荷物を持ってリビングへ降りて行った。
我ながら気を利かせたな、と思いつつ、あの二人が心配ではある。
どっちも女の子との経験もなさそうだし、まあ、僕も、だけど。
あんな動画を見て出来るもんか。そんなに簡単じゃない事は僕が一番知っている。
川北くんのお兄さんとの初めては本当に辛かった。
空っぽになった僕の中にぐんぐん突いてきて、痛いのを我慢しながらヤったから気持ちよくなんてないし。身体は変な方向に曲げられて、腰や背中まで痛かった。
その後の、オジサンとヤった時の方が慣れてて良かったくらいだ。
あれでお金がもらえるなら充分割には合ってると思う。ただ、その後の気分は最悪なんだけどね。
ソファーに横たわると、タオルケットを掛けて目を閉じる。
ちょっと張り切ってご飯を作ったからか、すぐに睡魔に襲われて、本当に二階の二人の事を気にせずに眠ってしまったようだ。
あの動画のせいか、僕の夢の中に小金井さんが出てきた。
僕の指先を見つめたあの瞳が、今度は僕の顔に注がれる。
夢の中で、「どうして髭なんか伸ばしているんですか?」と訊く僕。
「.........」
もちろん答えてはもらえなかった。
でも、小金井さんの顔が僕に近寄ってくると、急に恥ずかしくなって下を向いた。
こんな気持ちは初めて。初対面の男にフェラしたりする僕が、何を今さら恥ずかしがる事なんて、と思うが。
あの人だけは、僕の手の届かない所に居る人だと思う。
お金が貯まったら、また服を買いに行こう......
フワフワとした気分のまま、ぐっすり眠った様で、目が覚めたら時計の針が10時をまわっていてビックリする。
あ~、凄くいい気分だったのに.......
起き上がると、洗面所に行って顔を洗った。
二階の二人はどうなったんだろう。ちょっと心配ではあるが、まあ、そっとしておこう。
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