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第26話 え、.....どうして?

 手を引っ張って連れて行かれたのは、小金井さんのショップだった。 おもいきり店の中に放り込まれて、中に居た男の人はビックリしたように目を見開いて僕たちを見た。 「ど、どーしたんすか?!」  その男の人は、慌てて手に持った商品を戻すと、小金井さんに駆け寄って訊いた。 「や、何でもないけど.....。ちょっと急ぎの話しがあって、.....この子と。」  そう云われ、男の人は僕の顔を見た。目が合うと、何かを察したように何度か首を縦に振って頷く様な感じで口を開く。 「はぁ、....じゃあ、オレ休憩してきていいすか?」  頭を掻きながら小金井さんに云う。 「うん、....あ、今日はもうあがっていいや。あとは俺が居るから。」 「はい、じゃあそうさせてもらいます。......お疲れっした―」 「お疲れさま」  どうやらバイトの人だったらしく、大学生くらいの男の人はカウンターの奥に行くとそのままバッグを抱えて店から出て行った。 「そこに座って」と、カウンターの横の椅子を差し出される。そしてそのまま扉の所へ行った。 僕が座ると、小金井さんは店の扉にclosedの看板を下げて戻って来た。僕のせいで営業を止めてしまったのか、と少し申し訳なくて。 「営業の邪魔をしてしまって、.....すみません。」 「学校は?」 「行ってますよ。熱が出たって休んだ事ありません。.......先日の小金井さんを送った時以外は、......」  ちょっと言い方がまずかったかと思ったが、小金井さんは一瞬顔を曇らせると又僕に向き合った。 「ウリなんかして、そんなに金に困ってるのか?......おじさんの家で暮らしているんだろ?」 「おじさん、といっても血の繋がりなんかない。母親が一緒に暮らすって勝手に決めて、.....」 「お母さんは?......ぁ、親に捨てられたって、......?」   「母親は飲み屋の雇われママで。店がヤバくなったのか、店長とできちゃったのか、.....逃げていなくなっちゃいました。」 「じゃあ、おじさんは、.....」 「僕を置き去りにするための宿主くらいにしか思ってないでしょ。結婚もしてなかった。」  小金井さんに軽蔑されるかもしれないが、僕の生い立ちはこんなもの。でも、ほんの少し悲劇の少年を演じてみたくて、肩を落として下を向く。 「金は?....じゃあ、金も置いてってくれなかったのか?学費とか、.....?」  小金井さんが益々心配そうな顔で僕を見る。だからつい、..... 「おじさんが、家には置いてやるから金は自分で稼げって。.....母親には自分が貢いだんだから、置いていった金は自分のものだと、.......」  そう言い切ってしまえば、小金井さんはどんどん憂鬱な表情になる。 本当は母親のお金はおじさんに預けてあって、それも僕を追い出せなくする為にした事。自分でも感心するくらいだ。 「帰ります。......小金井さんに話したってどうにもならない事ですし.....。もうすぐ入学金も貯まりそうだし、学校に入ったらちゃんと美容院でバイト出来そうなんで。.....じゃあ、おじゃましました」  そう云うと、デイバッグとジャケットを持って立ち上がる。哀れな少年は此処までだな。と、頭を下げて出ようとした時だった。 「はぁぁぁあ~~、その姿を見たらダメだな。......取り敢えず今から家に来い。飯は食わせてやるから。あと、帰りたくないなら暫く泊めてやってもいい。だからウリはするな。したら追い出す。」    耳を疑った。小金井さんが僕に云った言葉をもう一度頭の中で整理してみる。僕を置いてくれるって?え、......どうして......?  

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