35 / 42
第35話 ちょっと虚しい日
僕としては、勉強とバイトと小金井さんの食事作りを頑張っているつもり。
ただ、今はまだ修行中といった所で、完璧にやれている訳じゃなかった。
小金井さんとの暮らしも、未だに距離を置かれていて、本当にたまーに、身体を貸してもらって僕が勝手に性欲を満たしているって感じだった。
正直、バカな事をしているなって思うよ。
桂さんの写真に向かって、「どこかで僕らの事見てますか?」なんて呟いても、返事は返ってこないし、自分で虚しくなるばかり。
実在する人物なら、対等に向き合って小金井さんを取り合う事も出来るけど、こんな形じゃ僕の負けは確実だ。
「あ~あ、小金井さん今日も遅いのかなー」
晩ご飯の焼き魚をつつきながら一人ぼやくと、カタンと玄関の開く音がした。
カギは掛けずにいるから、小金井さんが帰って来たのかと思って「おかえりなさい」と声を掛けるが返事がない。
アレ?と思い立ち上がると玄関の方に向かう。
「お~、、、、、」
そこに居たのは小金井さんで。
そんなにお酒が強い訳じゃないのに.......
きっとまたオーナーか、あのゲイバーのママに飲まされたんだ。
「もう、どうして学習しないんですか?いつも飲んでくると酔っぱらって記憶が飛ぶでしょ?」
小金井さんの腕を僕の肩にかけて立ち上がらせると、そのまま二階に連れて行く。
酔って帰って来ると毎回こんな状態で、本人は記憶にないだろうけど、僕は着替えさせて大変な思いをしているってのに。
けどまあ、そんな時は身体を借りてしまう時もあるから、ダメとはいえない。
ただ、身体の機能が停止してしまう時はちょっと辛いかな。ひとりでよがるのも恥ずかしいっていうか.......
「小金井さん、僕、食事の途中なんで。今夜はこのままおとなしく寝させてあげます。」
耳元でそう囁くと、脱がした服を持って部屋を出た。
いつまでこんな事が続くんだろう.........。
シラフで抱き合える日は来るんだろうか.........。
ともだちにシェアしよう!