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第39話 僕の事が見えてる?
リコリスを後にして家に戻ると、既に帰宅していた小金井さんは居間の畳の上で居眠りをしていた。
「そんな所で寝たら風邪ひきますよー」
声を掛けてもスヤスヤと眠っていて起きる気配がない。
チャンス。と思って顔を近付けてみる。が、まだ瞼は開かなかった。
少しだけ小金井さんのくちびるに触れてみる。
うーん、という微かな声はするが、眠気の方が勝っている様で僕がキスしても気付かれない。
こんな時だけだよ、小金井さんにキスできるのは。
なんとも可哀そうな僕。どんなに好きになっても、小金井さんからキスを求められることはないんだ。小金井さんにとっては、僕は永遠に高校生のままで、ウリをさせない為に身体を貸す、ぐらいにしか思ってはくれない。
はぁ~、と長いため息を吐くと、小金井さんから離れた僕は台所に行って水を飲んだ。
それから、フン、と力を込めると小金井さんの腕を自分の肩に乗せて上体を起こさせる。
「ぁ、あ~~、帰ってたのか、おーはらどこ行ってたんだよ。遅かったな。」
やっと目覚めた小金井さんが、僕の肩に体重を乗せると訊いてきた。
「はじめママの店に行ってたんです。焼きそば食べてきました。」
「あー、そうか。ママは元気だった?」
「はい、相変わらずド派手でしたよ。小金井さんによろしくって云ってました。」
「そうかそうか、今度新しい店の事で訊きたい事あるから行こうと思ってたとこ。」
「店?また広げるんですか?」
僕が訊ねると、まあな。と云って小金井さんは自分で立ち上がった。
その後で水を飲みに行くと、そのまま二階の部屋にあがって行くが、僕の事は全く見てくれなくて、おやすみ。という声だけを廊下に残して、僕の前から姿は見えなくなった。
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