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第40話 征服したくて *

  相変わらず学校と美容室でのバイトに明け暮れて、僕は小金井さんとの引っ越しの準備を出来ずにいる。が、元々自分の荷物なんてデイバッグ一つで済むようなもの。家具なんてここにある物を使わせてもらっているだけ。 「小金井さん、僕はいつでも引っ越し出来る様に準備してますけど、家具とかどうすればいいんです?」 「桂さんが、此処にある物で使えるなら持って行ってもいいって。」  小金井さんは、僕がスパゲティを茹でるのを見ながら云った。桂さんは亡くなった恋人のお父さんで、この家もタダで貸してくれている。その上家具までくれるとは、と思ったが、結構年季がたっている物も多くて、捨てるよりはいいと思ったんだろうな。  「買う物無くて良かったですね。」  僕がそう云うと、小金井さんは僕にベッドを買ってくれると云った。 「いりませんよ、部屋が狭くなるし。.......あ、でもキングサイズのベッドなら寝てみたい。」  出来上がったスパゲティを運びながら云うが、まあ、冗談で云ったんだけど、小金井さんは少し考えて「なら、キングサイズのベッド買って二人で使うか?寝室も一つで済むし。」なんて云ってくれて。 「え、マジで?いいの?」  嬉しくなって僕は小金井さんに抱きついてしまった。 冗談でもそんな事を云われたら、飛び上がる程嬉しい。 今まで僕の事なんて眼中にないと思っていたのに.......。 * *   夜になって、小金井さんのいる二階へ上がって行くと、「入ってもいいですか?」とドア越しに訊いた。 ああ、どうぞ、と云われて部屋に入って行くが、いつもの様に小金井さんは横になったまま、背を向けて寝ている。  そっと布団をめくると、小金井さんの背中側にするりと自分の身体を滑り込ませる。 ギュッとしがみ付くように抱きつくと、小金井さんの身体に沿うようにくっついた。 「おーはら、暑苦しいよ。」と云われ身体が少し離れる。  大体いつもこうやって、小金井さんに身体を寄せると首筋にくちづけをした。 僕が小金井さんの腹に手を当てて、身体の線をなぞる様にしても、何も云う事はなかった。  身体を貸す、と云った手前、拒否もしたくないのかも。 「疲れているんじゃないのか?」  そう訊かれ、「疲れている時ほど欲しくなるんですよね。今夜は解してきたからすぐに出来ますけど。」と云った。それから小金井さんの股間に手を持って行くと、ゆるりと撫でてみるがやっぱり拒否はしないみたい。  一瞬、小金井さんを押し倒したい衝動に駆られる。僕が小金井さんを抱いたらどうなるんだろうか。嫌がるかな.......?  今まで自分から抱きたいなんて思った人はいなかった。でも、小金井さんなら.........  後ろからパンツのゴムに手を掛けると、一気に尻までズリさげて僕のものを小金井さんの尻に当てがった。初めての感触。太ももの付け根の隙間に差し込んで、ゆっくり擦りつけると、小金井さんは流石に声をあげる。 「おい、何のつもりだ!」  そう云われても、しっかり肩を掴んで離さないでいると、「これ、スマタです。気持ちいいでしょ?」と訊いてみる。でも気持ち良くなっているのは自分の方だった。 なんだか、小金井さんの中に入っている様な感覚になって、腰を打ち付けてみた。 「や、めろ......おーはら.....」  小金井さんの必死の声が聞こえてくるが、僕は構わずにその頬に手を回すと無理やりくちづけをした。自分で制御できないくらい興奮しているのが分かる。だって、こんなの初めてで。  小金井さんを犯している様な感覚って.......。この人を誰にも渡したくない。 そう思ってしまった。  僕のものは密を垂らしながら、小金井さんの孔に滑り込みそうな程勢いがついていて。 もういっそ、このまま挿れてしまおうか......そう思った時だ。 「挿れたら...........殺す。」  僕の目を見ると、小金井さんはそう云って睨みつけた。  その瞬間、ゾクッと震える様に僕は小金井さんの背中に白濁を放ってしまう。 小金井さんの瞳が官能的で、僕に征服されまいと必死の言葉が胸に刺さると、そのまま力尽きて横たわるしかなかった。

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