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第11話 大学への夢

“矢野君の立ち入り禁止区域……” 僕がそのことについて尋ねると、 矢野君は途端に黙り込んでしまった。 でも、黙り込みという同じ行為でも、 少し感じが変わった。 今までだと、ムスッとして怒った様な感じだったのに、 僕の思い違いと言う事もあるかもしれないけど、 “スマン、今はまだ話せない” とでも言っているような、 下を向いて遠慮をしたような、 謝ったようなそんな感じのダンマリだった。 “まだ話す準備は出来て無いか……” 僕は最後のおそばの汁をすすって ちらっと矢野君の顔を上目使いで見上げると、 「ねえ、おにぎりも頼んでいいかな?」 と尋ねた。 矢野君は僕の反応に面食らったようだけど、 少しホッとしたようにして、 直ぐに追加でおにぎりを注文してくれた。 「ねえ、矢野君ってさ、人見知りなの? そうじゃないよね?  少なくとも女の子とデートする度胸はあるみたいだし…… 僕の思い違いかもしれないけど、 少なくとも、僕には心を開いてくれてるよね?」 そう言うと、またチラッと矢野君を見た。 でもやっぱり彼は黙ったままだった。 「あのさ、質問に答えたくなかったら別にいいんだよ。 そりゃあ、矢野君の事は知りたいけど、 別に答えないからって腹が立つとか、怒ったりって無いから。 誰にでもプライバシーはあるんだしね! そこんとこは僕も分かっているつもりだよ? それでも僕、めげずにバンバン話しかけると思うけど、 友達止めたりしないでね。 答えたくないところは答えなくって良いんだから!」 そう言うと、矢野君はまた唇の端を上げて静かに微笑んだ。 そんな矢野君を見て僕も気が大きくなった。 “やっぱり矢野君は僕を嫌ってなんかない” そう思うと、もっと自分の事を知ってほしいと、 色んな事を話し出した。 「ねえ、城之内大学って知ってる?」 矢野君は “何を急に” みたいな顔をして僕を見た後、 「あのお見合い大学とか言われている大学だろ?」 と、知っているような感じだった。 「そうそう、その大学! 僕ね、その大学に行くのが夢なんだ!」 「お前がか?」 「そうだよ! 僕が行ったら変?」 「いや…… 変って言うか、 お前は大学へは行かないのかな?って……」 「え~ どうしてそう思ったの?」 「いや、いつも自分の事、貧乏~、貧乏~言ってるからさ…… 高校を卒業した後は働くのかなって…… スマン、偏見だったな」 「ハハハ、大丈夫だよ! 僕ね、そこへ行ってお金持ちの番を見つけるのが目標なんだ! ねえ、矢野君も城之内大学に行かない?! そこで僕と一緒にキャンパスライフを謳歌しようよ~」 僕がそう言うと、 「お前って、本当に夢もロマンもへったくれもないんだな」 とまた矢野君を笑わせてしまった。 「矢野君~ 君、なぜあの大学が お見合い大学って言われるのか分かってないな~! もうね、キャンパスは凄いみたいだよ。 恋人たちのパラダイスみたいだって知り合いが言ってたんだ! 右を見ても、左を見ても、αやΩがウジャウジャだって! αとΩのカップルだってここは何処?! みたいな感じで右から左だってよ! もう、行かない手はないでしょう?! 僕なんて超貧乏だし、どんくさいし、 出会いなんてサラサラないし、 今のままでいても番なんて見つからないの! もう城之内大学に行くしかないの! ねえ、一緒言ってお互いいい人見つけようよ~ そしてWデートなんかしてさ~ あ~ 考えるだけで楽しい!」 僕がそう言うと、矢野君はまた大笑いし始めた。 「お前、変なところ極めてるな。 あそこ、人気ありすぎて、 今ではかなりレベル上がって来てるんじゃなかったか?」 「そうなんだよね~ 受験者多すぎて、 自然と偏差値が上がって来てるんだよね。 矢野君ってαだから勿論頭いいんだよね? でもさ~ あそこの大学の受験者って 芋の子洗いみたいに、みんな同じような偏差値だから、 それプラス、皆何か複数の特技や経験を積んでるんだよね~ 僕なんて何もないし…… でもね、でもね、施設出身の子達って優遇されるらしいんだ~ そこを考えると、 “お母さん、僕を施設に置いていってくれてありがとう!” ってな感じなんだけどね~」 そう言うと、雰囲気がちょっとしんみりとしてきたので、 話題を変えようとちょうど耳に入って来たテレビのニュースに聞き入った。 「ねえ、台風来てるって!」 ちょうど、天気予報のニュースで、 僕たちのいる所が直撃されるという情報が入って来た。

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