4 / 87
第一章・4
「今まで上のクラブで働いていたそうだが、なぜ地下に潜ろうと思った?」
「お金が、欲しいからです」
了は、うなずいた。
確かに表のきれいな業務に比べれば、闇クラブの方が格段に稼ぎはいい。
客が落とすチップも、高額だ。
「では、なぜ金が欲しい?」
「それは」
初めて、口ごもった遥だ。
了は、興味を持った。
借金返済のため、という理由が、地下へ堕ちてくる子の理由のトップだ。
遥も、その口だろうか。
「弟の、治療費のためです」
「治療費?」
「弟は難病で。治療や手術にたくさんのお金が必要なんです」
ほう。
嘘にしても、出来過ぎている。
了は、さらに遥に興味を惹かれた。
「松下。この子は、私が直々にテストしよう」
「よろしいので?」
「部屋は空いているか」
ただ今、と動き出す松下に、ソファにゆったりと掛けたままの了。
遥は、不安になった。
(オーナー直々のテスト、って。一体僕は、何をさせられるんだろう)
考える間もなく部屋が整い、遥は了に伴われて地下の一室へ入った。
ともだちにシェアしよう!