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第四章 ホテルにて
高級ホテルのラウンジに、了は遥と共にいた。
美しい夜景を見下ろしながら、鮮やかなカクテルのグラスを合わせる。
「乾杯」
「何に、ですか?」
そうだな、と考え、了は少し瞼を伏せた。
「君の精神力に」
精神力、と遥は不思議そうに繰り返した。
「そうだ。商品とは言え、どんな客の要望にもしっかり応えている。そのプロ意識に、乾杯だ」
「ありがとうございます」
少しだけカクテルで喉を潤し、遥は了を見た。
「僕を合格にしてくださって、感謝してます。おかげで、お金が稼げます」
「変態の相手をさせられても、か?」
「少し我慢すれば、済むことです」
弟の苦しみに比べれば些細なことだ、と遥は言う。
そんな彼の弟に、了は少しだけ妬けた。
「弟の名は?」
「航大(こうた)です」
そうか、と了は会話を切ってしまう。
遥は思いきって、自分から尋ねてみた。
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