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第四章・4
オーナーさんに親切にしてもらえて、自然に歌っちゃった。
(ヤだな。僕、こんなに浮かれちゃって)
しかも、大好きな曲だ。
よほど嬉しい時にしか、口にしない曲だ。
しかし遥は瞼を閉じ、ゆるりと首を振った。
少し甘やかしてもらったくらいで、図に乗っちゃダメだ。
(僕は商品なんだから。オーナーさんが商品を大切に扱うのは、当たり前のことなんだから)
もしかして、他にもこんな風に優しくしてもらってる子がいるかもしれないし。
「ありがとう。もういいぞ」
「は、はい!」
ドライヤーを慌てて止め、遥の思考もそこで止まった。
「では、寝るか」
「はい」
ベッドに上がると、了はすぐに遥に口づけてきた。
(あ、優しいキス。嬉しい……)
遥も二週間で、キスの仕方を覚えていた。
了と舌を絡ませ合い、濡れたキスをたっぷりと味わった。
「ん……、ぅん。っふ、ぅう、ん……」
甘えた声が、自然に漏れる。
うっとりと目を閉じて、遥は了に身体を任せていた。
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