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第四章・5
遥の全身を愛撫しながら、了はその身体に残された痕に眉をひそめた。
「結構、キスマークが残ってるな」
「あ、はい。はぁ、あぁ……。ごめんなさい……」
「君が謝ることじゃない。客に問題がある」
今一度、規定を見直して徹底させなくては。
素肌に性行為の許される客層なので、犯人はシルバー会員か、ゴールド会員だ。
商品に傷をつけることは、たとえお客様でも許されない。
「遥、正直に言ってみろ。君にこんな痕を付けたのは、誰だ?」
「あ! はぁあんん!」
途端に、遥が射精した。
一体なぜ!?
その客を思い出すだけで、イッてしまうのか!?
しかし遥は、それは違うと首を横に振った。
「あ、あの。オーナーさんが、初めて僕の名前を呼んでくださったので……」
何という。
(マズい。可憐すぎる)
しかし、そんな遥に『オーナーさん』と呼ばれるのは悲しい。
自分だけ、他人行儀に扱われてしまうのは、辛い。
「だったら、遥も私のことは名前で呼んで欲しい」
「えっと。じゃあ、葛城さま?」
「殿様じゃないんだ。さん付けで構わないよ」
優しい言葉に、遥は再び震えた。
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