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第五章・4

 それにしても、と了はボルボを運転しながら考えていた。 「絶対、オーバーワークだ」  隣に、遥はいない。  コンビニに送り届け、その帰り道で思った。 「昼はコンビニ、夜は『コーラル』、そして、闇クラブ……」  遥に彼の一日を聞いて、半ば呆れながら了は働き過ぎだ、と言った。  しかし、遥は笑顔でこう答えた。 『僕が頑張れば、そのぶん弟が元気になれる日が近くなりますから!』  弟思いは結構だ。  Ωにしては、気力体力ともに強い。 「だが……」  気を張り詰めて生きていると、ある日突然折れることは多々ある。  了はこれまで、そんな人間を大勢見てきた。 「何事もなければいいが……。いや、何かあった後では、遅いな」  少しでも楽に、遥が稼げる道はないだろうか。  自然と難しい顔をしている自分に気づき、了は我に返った。 「私は、何を考えてる? 彼は商品の一つに過ぎないのに」  だが、私はハッキリ言ったのだ。 『どうして葛城さんは、僕にこんなに良くしてくれるんですか?』 『君が気に入ったから、かな』  そして、気に入った人間は贔屓にしたい。 「いいじゃないか。単純明快で」  私は、遥が気に入ったんだ。  それで、いい。  ふ、と息を吐いて、了はアクセルを踏んだ。

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