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第五章・6
「遥、制服を脱げ」
「はい」
了はスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩め、シャツのボタンを上から二つ外した。
「ベッドの上に、寝るんだ」
「はい」
さて、と了も遥の隣に横になると、掛布で体を覆った。
「眠るぞ」
「え?」
「ぐうぐう眠ってしまうんだ。一週間の疲れを癒せ」
「で、でも。それじゃオーナーさんが」
「了、だ」
「了、さんは。それでいいんですか?」
構わん、と了は遥を腕枕した。
「相手に困ってるわけじゃない。今夜は、ただ君と眠りたいだけだ」
「ありがとうございます」
「そうだな、歌を。子守唄を歌ってくれ。『Fly Me to the Moon』を」
「はい」
清らかな遥の歌声は、了をくつろがせた。
遥も、久々に心が洗われる心地がした。
「In other words, I love you……」
歌い終わると、了は遥の頬に軽くキスをした。
「いいな。癖になりそうだ」
「ありがとうございます」
歌いながら、遥も夢見心地になっていた。
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