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第五章・8
「君には私とは別に専属のコーチを付けるよ。安心しなさい」
ジムの入会金やその他諸経費は、全て了が支払うという申し出に、遥はひたすら恐縮した。
「送り迎えは、私がしよう」
「本当に……、そこまでしていただくわけには……」
「弟の病気を早く治したいのなら、私のプランを受けるべきだよ」
目に涙をにじませながら、遥は了の申し出を受け入れた。
「ありがとうございます。ありがとうございます……!」
「ああ、泣くんじゃない。泣くくらいなら、歌ってくれ」
「Fly me to the moon Let me sing among those stars……」
遥の歌声を聞きながら、了は瞼を閉じた。
やがて、その声も途中で止まり、遥は眠ってしまった。
「君はこんなにがんばってるんだから、少しくらい楽をさせてやりたいんだよ」
もう一度、了は彼の頬にキスをし、夢の中へとその身をゆだねた。
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