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第六章 愛だの恋だの
「ほら、スポーツドリンクだ」
「ありがとうございます!」
ジムでのトレーニングを終え、了と遥は合流した。
二人でのジム通いも、もう一ヶ月が経とうとしていた。
「どうだ? そろそろ私のような、アスリートコースに挑戦しては」
「いえ、まだまだ。ついて行くのが、精一杯です」
しかし、高校時代に部活の体力づくりで鍛えていただけあって、遥の伸びは早かった。
初めて会った時には痩せている印象が強かったが、今ではいい具合に筋肉が付き、しなやかになっている。
そんな遥の姿に、了は安心していた。
(これで、激務に体力が尽きることはないだろう)
気力は充分の遥なら、しっかり勤めて弟の治療費を稼ぐことができるだろう。
そう考えながら、彼を助手席に乗せてボルボを走らせた。
車内の遥は、お喋りな方ではない。
どちらかといえば、沈黙の方が多かった。
しかし、それも了の気に入った。
了もまた、元来にぎやかな性分ではなかったからだ。
そんな遥が、今日はぽつりと口にした。
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