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第八章・4

 三日後、遠山が遥を指名したと聞き、了は闇クラブへ駆けつけた。 「こないだ来たばかりだろう? あの人、官僚のくせにヒマ人なのか!?」 「それだけ遥くんにご執心、ってことですよ」  モニターの中の遥はすぐに素裸にされ、飲食に付き合わされている。  クリームチーズを白い肌に塗り、舐めまわす遠山は、了の目に醜悪だった。 「何か言ってる。もう少し音を拾えないか」 「単なるエロワードですよ」  確かに、聞く方が恥ずかしくなるような、べとべとに甘い卑猥語だ。 (これはダメだな。遥の脳が汚染される)  やはり彼は、退会させるべきだ。  そう決意を新たにしたところで、遠山は遥をベッドに引きずり上げた。  無残に犯される遥を見ていると、胸が痛む。 「見ている方も、辛いな」  了のそんな言葉に、モニタースタッフは目を円くした。  あの、鬼のオーナーが、こんな優しい言葉を!?  何か心境の変化があったんだろうか。 (そういえば、時々商品のことを『スタッフ』って言ってたし)  了を変えたのは遥だ、とは知らないまま、彼はモニターに集中した。  今夜、遠山の尻尾をつかみ、退会に持ち込む手筈になっている。  わずかな隙も見逃すまい、聞き逃すまいと、集中した。  そしてそれは、了も同じことだった。

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