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第九章・2

 何食わぬ顔で、了は遥に探りを入れた。 「遥は、好きな人とかいるのか?」 「え!? あ、はい……。います」 「それは、遠山さん?」 「違いますよ、もう!」  笑う遥の心には、隙が生まれている。  そこを、了は巧みに突いた。 「もしかして……、弟くんが好きなのか?」 「……解っちゃいますか? ヤだな、もう」  さらりと告白され、了は少なからずショックを受けた。  闇クラブで変態に玩具にされても、唇を噛んで耐えるのは、愛あればこそ、だったのだ。  それでも了は余裕を忘れず、こちらもさらりと言ってみた。 「私は? 私のことはどのくらい好きでいてくれるんだ?」 「了さんは、航大の次に好きですよ」  二番目、か。  しかし、一番好きな航大との間には、越えられない壁があるのだろう。 「二番目とは、嬉しいことを言ってくれる」  額に指を当てようとして、了はやめた。

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