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第十章 砕けた恋
航大の手術は無事終わり、成功した。
術後の経過も順調で、やがてリハビリを始めた。
長い間、ベッドに寝たきりだったのだ。
歩く練習を、看護師と共にしていた。
「航大くん、良かったな」
「了さんのおかげです」
私は何もしちゃいない、と了はテイクアウトした寿司をつまんだ。
遥のアパートで、くつろいでいた。
こんなに狭いのに、どうしてリラックスできるんだろう。
(狭い分、遥が近くに居るからだな)
だだっ広い自分のマンションに独りでは味わえない、温かな心地を了は感じていた。
「それで。僕、航大を治してくれたお医者様にお礼の手紙を書いたんですけど」
「それは何よりの報酬だ。私が責任をもって、彼に渡しておこう」
お願いします、と言う遥から手紙を預かり、了はそれを大切にバッグへしまった。
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