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第十章・4
「遥!」
「航大!」
病院のロビーで、二人は再会した。
「良かった。すっかり元気だね」
「うん、ありがとう。」
彼の車椅子を押す看護師が、そんな二人を温かく見守っている。
「航大くんは、本当に頑張り屋さんで。リハビリも熱心なんですよ」
「遥、紹介するよ。リハビリ担当の、雪緒(ゆきお)さん」
「初めまして。永崎 雪緒(ながさき ゆきお)です」
ありがとうございます、と遥はていねいにお辞儀をした。
今後の航大の体を管理してくれる、大切な人だ。
しかし同時に、おかしいな、とも感じた。
(航大、どうして永崎さんのことを苗字でなくて、わざわざ『雪緒さん』って呼ぶんだろう)
その時は、さして深く考えなかった。
きっと、リハビリを通じて仲が良くなったのだろう、程度にしか思わなかった。
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