69 / 87
第十章・5
病室に戻り、雪緒の介助でベッドに横になった航大は、彼に声をかけた。
「じゃあ、また明日」
「うん、また頑張ろうね」
ふ、と二人で視線を合わせ、雪緒は一礼して部屋から出て行った。
途端に、航大は遥に身を乗り出した。
「ね。雪緒さんのこと、どう思う?」
「どう、って。航大のこと親身になって考えてくれる、いい看護師さんじゃないかな」
「それと、素敵な人だろ?」
「ん? まあ、ね」
ちょっと、待って欲しい。
遥の胸は、嫌な予感に張り裂けそうだった。
「雪緒さん、Ωなんだ。運命の番って、ホントにあるんだなぁ、って思ったよ」
「ど、どう言うことかな」
少し声をひそめ、航大は遥に打ち明けた。
「実はさ、俺たち付き合ってるんだ」
「え!?」
一目会った時から、二人は恋に落ちたという。
そんな航大に、遥は必死に訴えた。
「でも、雪緒さんは航大よりずっと年上だろう? いいのかな、そんなのって!」
「年上って言っても、6年くらいだよ。それにさ、両想いだし」
遥は、頭を殴られたようなショックを受けていた。
(僕だって、航大が好きなのに。今日こそ、告白しようと思ってたのに!)
ともだちにシェアしよう!